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2丁目タイムズ

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首里城と琉球王国 兵庫県立歴史博物館(2丁目タイムズ 2024.3月号)

2024.03.29

上記の記事の中でも触れましたが、兵庫県と沖縄県が友愛提携協定を結んで50年の月日が経ち、両県では今日までに各方面で活発な相互交流が推進されています。沖縄ではシンポジウムが開催されましたが、兵庫県立歴史博物館では3月16日から特別展「首里城と琉球王国」を開催しており、早速拝見してきました。特別展は4部構成になっており、首里城をはじめとした南西諸島のグスク(城)や琉球王国の社会のしくみが分かる歴史資料のほか、近世琉球の文化を象徴する美術工芸品、琉球の風土に根ざした民俗資料などを展示し、琉球・沖縄の歴史・文化を紹介しています。また、現在進められている首里城の復興のようすも取り上げています。様々な資料の中で印象に残ったのは「ノロ」と呼ばれる琉球王国で、支配者によって任命された地域の女性神職者の存在でした。村落の祭祀を司った存在であり、現在まで残っている地域もあるのだそうです。琉球には古来、村落の五穀豊穣や平和を願って祈りを捧げる神女がいました。それが女性であるのは、琉球に古くからあった、姉妹が兄弟を霊的に守護するという「おなり神信仰」に通じるもので、ほとんどすべてのグスクに拝所(うがんじゅ)が設けられ、聖地であり、祈りを捧げる場所である御嶽(うたき)が各地にあることからも、当時の人々が神への祈りを大切にしていたことがわかります。つまり、その祭祀を司る神女はとても重要な存在だったといえます。ノロが手にする正装具の一つである「神扇」の美しさは秀逸でした。その他にも多くの興味深い風習やそれにまつわる展示品もあり、例えば「ティンゲー」と呼ばれる竜頭を象った祭具は、沖縄の葬列でこれを掲げ、故人様の「龕(ガン)」という棺を担ぎながら火葬場まで運ぶ際に使用されたものであり、ご遺体を守る役割があるようです。そして現在、再建途上にある首里城ですが、14世紀中葉に初めて築城され、何度も焼失し、2019年の火災後、2026年秋の復活を目指しています。古くから中国による冊封体制と薩摩藩とのはざまで苦しんできた琉球王国ですが、その苦しみはこの首里城の歴史を振り返る時に、現在も世界のパワーバランスの中で揺れ動く沖縄の苦しみと同じ気がしています。

神扇
神扇
ノロ

兵庫県立歴史博物館:兵庫県姫路市本町68番地
TEL 079-288-9011 FAX 079-288-9013
https://rekihaku.pref.hyogo.lg.jp
(特別展は5月12日(日)迄開催)